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ENTROPYX説

2005/01/25

メーカーとユーザーの力学

日経ビジネスに掲載された久多良木SCE社長のコメントが各方面で話題になっている。ポータブルゲーム機PSPの不具合(氏によれば仕様)に関しての公の場での発言である。

「これが、私が考えたデザインだ。使い勝手についていろいろ言う人もいるかもしれない。 それは対応するゲームソフトを作る会社や購入者が、この仕様に合わせてもらうしかない。」 「使用する液晶画面はこれ以上小さくしたくないし、PSP本体もこれ以上大きくしたくなかった。 ボタン位置も狙ったもの。それが仕様。これは僕が作ったもので、そういう仕様にしている。 明確な意思を持っているのであって、間違ったわけではない。世界で一番美しいものを 作ったと思う。著名建築家が書いた図面に対して門の位置がおかしいと難癖をつける人は いない。それと同じこと」
日経ビジネスno.1276 8ページより引用

たしかに過激なコメントだ。ユーザーを挑発しているとしか思えない。
某巨大掲示板やブログでは批判と揶揄の的となっている。
実際にPSPを購入した人にしか、その不具合の程度はわからないわけで、お気の毒にとしか言いようがない。
ネット上で大騒ぎになっているのは、PSPを実際に買った人のクレームというよりは、買ってもいない人が久多良木氏のコメント(挑発)に対していろいろ言っているケースのほうが多いようだ。
まぁ言論の自由は保障されているので、それをまたどうというわけではないが・・・


欠陥か欠陥ではないかという判断は微妙だ。音の出ないラジオや、開け閉めのできないドアなどとは違い、はっきりとその機能の欠如が確認できないゲーム機は、その判断は難しい。

そういった微妙な線の場合、これまで大抵日本の企業のトップは折れるほうに回り「申し訳ありません いま至急対処に当たっているところでございます」と言って急場を凌いできた。
今回の騒ぎはおそらく、多くの人が当然得られるであろうと思っていたそうした謝罪コメントとは裏腹に「つべこべ言わずに大人しく遊んでろ 文句があるなら買いなさんな」という強硬な態度を大メーカーの代表者がとったことが主たる要因だろう。

たしかにそんな大胆な発言を公の場でした人というのは記憶がない。
「お客様は神様です」と教わってきた日本人にとって、違和感を感じないわけはない。
不具合に対する修理は無償で受け付けているため、全く消費者を無視しているわけではないのだが、やはりそうした違和感が人々の気分を煽っているのだろう。

しかし冷静に考えてみれば、久多良木氏の言うことには理解できる面がある。「文句があるなら買わなければいい」という考え方は市場原理から言えば別段おかしい話ではない。買った後で苦情を言ってくる人に対しても、初期ロットで購入することに対するリスクは付き物でそれがいやならしばらく経ってから買えばいい、ということなのだろう。

今回のこの発言では、ユーザーの意見なんか聞くもんか!という氏の姿勢が良くわかる。自分が創りたいものを創っているだけ、それをあなたが欲しいというなら譲ってあげましょう、その代わり文句は言わない約束だよ、とでも言っているように聞こえる。

あらゆるものが当たり前のように手に入り、商品は完璧であるべきだと思っているユーザーにとっては、作り手側である氏の発言は受け入れ難いかもしれない。しかし他に選択の自由がないような商品に限っては、そこではメーカー優位にならざるを得ないという根本原理を忘れてならない。

いやなら買わなければいい。気に食わないメーカーだと思ったら今度から二度とそのメーカーの商品は買わないことだ。
ネットの利を活かして、その商品や会社の悪評を伝えていくのも間違った方法ではないだろう。

それによって売れ行きが減ってメーカーの考え方が変わればユーザーの勝ち、それでもそのまま売れ続ければメーカーの勝ち、なのではないだろうか。

何れにせよ、日本のメーカーにはもっとユーザーを無視するくらいメーカー主体で欲しいと思うものを創ってほしいものだ。公の場でそうした本音のコメントはしなくてもいいから・・・

sim

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